山岸潤史そしてニューオリンズな夜

2012/09/19 at 01:11

チキンシャックの盟友の一人、ギタリストの山岸はニューオリンズ在住、地元誌に年間ベストギタリストに選出される等、現地に根ざしてしっかり活躍しています。彼がジョー・サンプル(クルセーダーズで名を馳せたピアニスト)のクレオール・ジョー・バンドの一員として来日、先日ブルーノートのショーに行って来ました。 ザイデコをベースにニューオリンズご当地音楽を詰め込んだバンドでした。ジョーは優れたジャズピアニストですが、半分以上アコーディオンを弾いてました。キーボード(デジタル・ピアノ)を弾く時より、何か楽しそう。ジョーの母親はニューオリンズの人だったので、子供時代に聴いたのは様々なニューオリンズの音楽だったそうです。この歳になった今、自分のルーツの音楽を演りたいという気概が伝わってきました。でも、すごくモダンな音楽性の持ち主なので、彼のバンドはニューオリンズで聴いたザイデコより洗練されスマートかな? そうだとしてもバンドの「楽勝のゆるゆる」感はニューオリンズのクラブギグそのまま。実は山岸がニューオリンズに移るもっと前、4~5年に渡って私自身、あの町に通い詰めた時期がありました。彼らのステージの空気から、当時の色んな情景が記憶に呼び覚され、懐かしくなりました。あの感じは好きやな~~!

山岸ですが、全く違和感なくとけ込んでいるだけでなく、ともすればイージーに流れやすいバンドを、要所要所で締める役割をしっかり果たしていて、さすが。彼のギターソロもすごく良かった。彼がソロを弾く時、気持ちのテンションを上げ、エネルギーをぎゅっとコンプレッションをかけるようにしぼりだしていく感じがあります。音の芯に熱を帯びたフィラメントのような何かがあってそれは彼独特。昔も今も変わりありません。コンパクトなソロパートながら、バンドがクッと盛り上がりアクセントになっていました。他のメンバーから信頼されてるのが傍目からもわかります。同じ仲間として彼を誇りに思い、すごく嬉しくなりました。

私自身もニューオリンズの町と人々の暮らしぶりから少なからず影響を受けたと思います。それを一言でいえば、お金や物がなくても人生を楽しめるんだという事、そのコツみたいなものを学びました。彼らの音楽にもそういう享楽的な心が溢れています。現在私の音楽はかなりストイックな方向性ですが、ストイックであると同時にあの「楽勝ゆるゆる感」も持ち込めたらいいなあと思いました。一見矛盾するようですが、自分にストイックであっても、同時に「根っからの寛容さ」、「結果に対する楽天性」も兼ね備える心境は十分有り得ると思います。難題ですが全ては自分の心の持ち様、これからの目標が一つ新たに増えました。

日本に居ながら、久々にニューオリンズの空気を味わい、色々思うところの多い一夜でした。