真珠の耳飾りの少女
「真珠の耳飾りの少女」に会ってきました。上野東京都美術館で開催中の「マウリッツハイス美術館展」です。以前から写真やポスターで見る度に、この作品に神秘的なオーラが感じられ、いつかこの少女に会いたいと思っていました。人気が高い展覧会はゆっくり絵を見る環境から程遠く、特にこの作品は長蛇の列。それでも、フェルメール独特の鮮やかな光をたたえた静謐さに触れると、周りの喧噪を忘れてしまいました。本当に見事な作品でした。
この展覧会は17世紀のオランダ・フランドル絵画の逸品が並び、殊にレンブラントとルーベンスの作品は、時代と文化や人種を超えて訴えかけてくる強い力に圧倒されました。見終わって外に出たら、真夏の上野公園はどこか遠い異国の景色のようでした。
最近よく『すべての芸術は音楽に嫉妬する』という言葉を肴にお酒を飲んでいたことを思い出します…。先日 都美館のスタッフであった女の子と知り合ったのですが、このフェルメール1点だけは観せてもらえたそうです。 映画ではグリートの名で使用人として描かれていた謎の多いモデル、フェルメールの視点をくぐり抜けて存在してしまう青いターバンの少女に会ったら あらゆる意味で嫉妬してしまいそうなので、まだ会いにはいけないでいます(笑)。
音楽を職業として37年も続けると、当然の事ながら耳が専門的に相当訓練されます。そんな耳には音楽が分析的に聴こえてしまい、結果、無条件に音楽を楽しめなくなってしまいました。専門的な経験を積む事で手(耳)垢が付き、子供のように無垢な感興が湧きにくい自分がいます。反面、眼の世界等、全く違う感覚世界で素晴らしいものに接すると、新鮮な喜びをもたらしてくれます。このフェルメールをはじめ、人類の宝といえる作品達に出会えました。女性の嫉妬は魔物、君子危うきに近寄らずですが、この展覧会、この猛暑を忘れさせてくれること請け合い!